養豚・養鶏 技術情報 技術アドバイザー
🐓 養鶏の技術情報
卵殻の異常について
規模の大小にかかわらず、奇妙な外観の卵を見ることがある。ここでは鶏卵生産でよくみられる異常卵殻事例とその原因及び可能な対応策について述べる。
卵巣からの卵黄放出から卵管内で卵形成されて産卵(放卵)するまでにおよそ24-27時間費やす。その過程の最後に完全な卵形の卵を期待したいが、そうでない場合がある。
卵形成過程;

卵殻の異常は卵殻形成に大半の時間(18-22時間)を費やす卵殻腺部(子宮部)で起こっている。
1.軟卵:Shell-less eggs
軟卵は卵殻がなく、卵の内部物質(卵黄、卵白)は卵殻膜で保護された状態の卵である。
卵殻膜の外側に殻を沈着させる卵殻腺が未熟だと軟卵を生じやすくなる。若令鶏、ヒートストレス、鶏病(鳥インフルエンザ、ニューカッスル病、伝染性気管支炎及び産卵低下症候群76など)、飲水不足、栄養不足(Ca、P、MnあるいはビタミンD3など)が理由としてあげられる。
ヒートストレスの制御、ワクチンプログラムの見直し、給水設備・飼料内容の見直しなどが求められる。
2.薄殻卵:Soft-shelled eggs
薄殻卵は軟卵とは異なり薄いCaの層が卵殻膜上に沈着し紙のような感触で、手で持つと陥没してしまう。
老鶏でよくみられ、ヒートストレス、過肥、鶏病(伝染性気管支炎、産卵低下症候群76など)、過剰な飼料中P含量、栄養不足(Ca、P、ビタミンD3)カビ汚染飼料、飲水不足、塩水あるいはマイコトキシン汚染飼料なども原因として考えられる。
ヒートストレスや過肥の制御、ワクチンプログラムの見直し、原料中マイコトキシンのチェック、水質検査、給水設備・飼料内容の見直しなどが求められる。
平飼いの農場では軟卵や薄殻卵は床面で破損し鶏に食べられてしまって検出されないことが多い。
3.卵殻表面のCa沈着:Calcium deposit on eggs
不規則な形をした過剰Ca沈着の粒状突起物が卵殻表面にみられることがある。卵殻表面への付着と卵殻膜と卵殻表面の間での付着の2タイプがあり、後者の場合は沈着塊を取り除くと卵殻にピンホールが生じる。
卵殻腺に欠陥がある場合か、卵形成中の石灰化過程で障害がある場合に起こることがあり、この沈着はどんな色の卵でもみられる。
飼料中の過剰なCaとビタミンDの両者またはいずれか一方で卵表面のCa沈着を引き起こすおそれがある。
飼料内容及び飼養管理のチェックが求められる。


4.ニキビ卵:Pimpled eggs
小さく隆起した塊が卵殻表面全体を覆い、ざらついてサンドペーパーのような手触り。ニキビの程度は、石灰化過程での異物の存在量による。
加齢、品種、ストレス、子宮部の卵殻分泌腺の炎症、過剰な飼料中Caなどが考えられる。
飼育環境や飼料内容のチェックが求められる。

5.スラブサイド卵:Slab-sided eggs
扁平な面を有する。卵殻質は低く扁平部分の卵殻は特に薄い。
通常、卵形成は一定の時間配分で一個ずつ行われるが、この異常卵は卵殻腺部に既に滞留する卵(先の卵)が移動する前に次の卵が入ったときに発生する。次の卵は卵殻腺部滞在が短く石灰化による硬化が不完全なために、先の卵と接触した面は扁平になりスラブサイド卵となる。何らかの理由で先の卵が卵殻腺部で通常より長く保持されたことによりこの接触が生じる。また、接触により先の卵の表面で石灰化にムラが生じてリング状の白い帯模様ができることがある。
加令、鶏舎照明の変化、あるいは鶏がストレスを受けている場合に起こりうる。Dharwale(2008)は、アドレナリン(ストレスホルモン)皮下投与が鶏の卵殻腺での卵保持とその後10日間異常卵殻の卵の増加を容易に引き起こすことを報告している。また、伝染性気管支炎などの鶏病もこの異常を引き起こす虞がある。
IBワクチンプログラムの見直し、午後の活動制限、点灯プログラムの見直しなどが求められる。

6.ヒビ卵:Cracked eggs
これらの卵は、ときとして卵殻に穴をもたらす大きなヒビ、星形ヒビ、あるいは髪の毛のように細いヒビを有し、卵内容物を漏らしてしまうおそれがある。
この現象は、老鶏で観察される傾向が強い。また、塩分の高い飲水の場合或いはCaかビタミンD不足がある場合には若令鶏で発生することもある。飼料中マイコトキシン(特にゼアラレノン)、あるいはヒートストレスもヒビ卵を生じうる。
水質検査、飼料内容の見直し、飼料原料チェック、飼養環境チェックが求められる。
7.シワ卵:Wrinkled Eggs
これらの卵は稜線あるいはシワのある表面を呈し、その卵殻は脆弱である。鶏の卵殻腺に欠陥がある場合や伝染性気管支炎に罹患していると生じる可能性がある。また、密飼いによる鶏へのストレスや飲水不足もこの異常を起こし得る
飼育密度チェック、飲水量チェック、ワクチネーション・プログラムの見直しが求められる。

8.波状のでこぼこ卵:Corrugated Eggs
これらの卵は、非常にでこぼこした波状の外観を呈する表面を有している。卵殻膜を卵殻で覆う前に栄養豊富な水分を卵殻膜内部に送り込む膨張過程で発生する。膨張が完了する前に適切にコントロールされずに終了すると、波状のでこぼこ卵が生じる。
この異常は老鶏で起こることが多いが、若令鶏でもみられることがある。ヒートストレス、塩分濃度の高い飲水、栄養不足やマイコトキシン汚染飼料などすべてが波状のでこぼこ卵を生じる可能性がある。
水質検査、飼料内容見直し、飼料原料チェックが求められる。

9.ボディチェック卵:Body-checked Eggs
卵殻腺部で硬化過程にある際に外部からの力あるいは過剰な活動でヒビ割れて産卵前に修復された卵。主に赤道部に修復跡がみられる。
ストレスあるいは不適切な点灯を受けた鶏からボディチェック卵が生じやすく、特に点灯時間と明確に相関がある。Dharwale(2008)は、点灯時間を16時間から19時間に増加するとボディチェック卵発生率が7.7%から18.3%に上昇し、16時間に戻すと5.8%に減少し、14時間に変更すると1%とさらに減少したことを報告している。
卵殻石灰化過程にある午後の鶏群活動制限と点灯時間の適正化が求められる。

10.変形卵:Misshapen eggs
産卵初期の発生が多いが、後期にもみられる。多様な奇形卵があり、写真左は卵殻形成時に鋭端部の収束が正常に進行しなかった卵、中央は赤道部がくびれた卵、右は長軸が長く楕円形に近い卵。
卵殻腺部の機能不全やストレス、卵管内卵への異常な圧力などが考えられる。
優しい鶏の取り扱い、午後の鶏群活動制限などが求められる。



11.退色(褐色卵など):Pale-shelled eggs
卵殻色素は卵殻の石灰化の最後に卵殻に沈着する。赤玉鶏の褐色卵の主な卵殻色素はプロトポリフィリンとビリベルジンである。これら卵殻色素の生成は若令鶏で最大であり、 加令に伴い徐々に減少する。
鶏病(伝染性気管支炎、産卵低下症候群、ニューカッスル病)感染、マイコトキシン、化学物質(ナイカルバジン、モネンシン、ピペラジン)、多量のアンモニア吸入、高熱、脱水、子宮部粘膜の炎症、重度のストレスなどは生殖器官に影響を与え卵殻色素の減少をもたらすことがある。
ワクチネーション・プログラムの見直し、鶏舎内空気の質のコントロールなどが求められる。
【参考文献】
今井 清:「ニワトリにおける卵生産過程とそのしくみ」日本鳥学会誌Vol.52(1):1-12(2003)
鎌田 隆:「規格外卵の分類と野外事例」鶏病研究会報Vol.38(4):169-181 (2002)
卵事例ハンドブック編集委員会:「改訂版卵事例ハンドブック」
DHAWALE, A. 2008. Abnormal eggs cause subnormal profits, World Poultry, Vol.24, No.6:20-23 (2008)
HERSTAD, O., THEILGAARD, K., SANDAS, O., Twin eggs and the biological limit for egg production, World Poultry, Vol.13, No.1:16-17 (1997)
University of Georgia Poultry Science Department “A Dozen Egg Abnormalities”