養豚・養鶏情報 技術アドバイザー

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暑熱対策(1)

近年の酷暑に、豚は大変な思いをしていることであろう。ヒトと違い、豚には汗腺がない。汗をかくことで熱を放つことができないのである。

肥育豚舎では思いもよらない頭数ですごし、換気も少なく、湿度が高い場合は、呼気からの放射熱も少なくなり、自分たちの糞尿にまみれて伝導放熱を行うしかないために、豚がすごく汚れる。
分娩豚舎内も十分な換気がないために、哺乳子豚には良い温度かもしれないが、母豚にはたまらない暑さであろう。

暑熱対策に対しては、昔から換気、送風、ドリップクーリングなどが薦められてきたが、舎内温度とその相対湿度の関係を考慮すべきである。
図1にアイオワ州立大学が出した、肥育豚のヒートストレスへ温度と相対湿度の関係である。

日本の夏は、一般的に相対湿度も高くなるために。豚を快適にするには非常に困難な状態である。
しかし、フィリピン、ベトナム、タイなどの暑熱環境でも豚は飼育され、それなりの成績を出している。

また、ヒートストレスになっている場合、当然のこととして、飼料摂取量が落ち、増体重も落ちる。14頭の子豚を哺乳している場合、母豚の飼料摂取量は9kg/日(2kg+0.5kg/子豚x14頭))が必要となるが、夏期にはめったに到達できない。加えて、飼料の内容によっても摂取量は変わる。

ヒートストレスへの対処法は、前述の物に加えて、飼養密度、冷たい飲水を与えるなどがあるが費用との問題もある。諸外国からの提案でまだ、日本でもできることがあるであろう。それらには、給餌時刻、給餌回数、飼料の内容などがある。それらには、

・換気量を増やし、体感温度を下げる。
・密飼いを可能な限り避ける。
・飲水温度を可能な限り下げる。暑熱時の水温は10℃が理想的である。
・給餌時刻を朝10時から夕方4時は避ける。最も暑い時間帯である。
・電解質、抗酸化剤を飲み水に混ぜて与える。
・飼料のエネルギーを上げる。
・飼料中の粗蛋白質、粗繊維含量を低める。

日本では母豚へは送風、ドリップクーリングを用いているところは多いが、肥育豚への配慮は少ない。
送風機も柱にただ、しばりつけてあり、冷却効果が少ない場合がある。角度、風量を再検討する必要がある。

また、大型送風機を壁に取り付けていても、豚の顔面への送風はできていない場合がある。
そのときは、ホームセンターなどで販売されている安価な扇風機を柱に取り付け床の方に風が行くようにしておくと意外と効果がある。(図2)


密飼いにおいては分娩腹数、産子数、敷地面積の条件があるために日本ではむつかしいかもしれないが、頭に入れておく必要があるであろう。空いている場所があれば、緊急の場所として用いる。

飲み水温度を下げるのも、むつかしい話であるが、近年酪農家が年齢や都市化の関係でやめられたり、大型化し集乳も隔日になってきているところも多い。

その時出てくるのがバルククーラーである。このバルククーラーはステンレス製で冷却効果は急速に4℃まで下げる能力がある。これを下取りし、ポンプで飲み水パイプを循環させる。(図3)

飲水量を計算し、ある程度の流水量を確保できるポンプ設置と配管工事で済ませることができる。水温はかなり下げることができるが、10℃から15℃くらいの設定で行えば、保温効果もあるので電気代も比較的少なめであろう。

この冷却水を20℃くらいに設定し、授乳豚舎の母豚が寝る肩辺りへ冷蔵庫の裏にある熱交換器のようなものに(図4)、冷却水を通し母豚のみ温度を低くしてやる方法を提唱されていた。ドリップクーリングと違って子豚が濡れることもなく母豚のみを涼しくできる。

今すぐ行えることとして、新鮮で可能な限り冷たい飲水(例:井戸水)を十分に確保することと、給餌時間を日照時間から外すということであろう。できるだけ冷たい水を十分な流水量で与えることである。

表1では水量は十分であったとしても生ぬるい水は嫌われているという例である。

また、豚は飽きやすい性格を持っているために、流水量が十分でない場合、あきらめて飲まなくなる。
授乳母豚であれば、当然飼料摂取量は減り、産乳量も減り、子豚の下痢を見られるであろう。
次回は、飼料、栄養の面からヒートストレス対策を考えてみたい。

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