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栄養により子豚の浮腫病と戦うための6つのヒント
浮腫症は、毎年何百万もの子豚に影響を与える複雑でありながら頻繁に起こる胃腸障害である。
子豚の浮腫症は、特定の血清型の大腸菌によって引き起こされると考えられている。 主な症状には、神経系の障害、まぶたの腫れ、下痢、足の不自由、食欲不振、成績の低下、全体的な発育不全状態および死亡率が含まれる。
直接的な獣医の介入とすべての農場運営を通しての高レベルの健康状態とは別に、少なくともこの病気の症状を軽減するためにいくつかの栄養介入が可能である。
一般に、大腸菌に対して効果的な飼料療法は、通常、浮腫症を引き起こす血清型に対しても効果的である。
しかし、栄養的な観点を観る前に、大腸菌を減らすための豚舎の衛生状態、豚の飲水の質、特に細菌数と鉄分が許容範囲内であることが必須である。
亜鉛と銅
浮腫症は、抗生物質が制限されている世界の地域でより蔓延している。 したがって、許可されている場合、酸化亜鉛は浮腫症に対する優れたサプリメントと見なされる。 通常、3,000ppmのZnで十分である。
酸化亜鉛とは別に、硫酸銅は、許可されている場合は、飼料に含まれる最大250 ppmのCuも、特に子豚後期の細菌感染に対して有益である。
亜鉛の飼料添加も厳しい状態となっている。すでにEUでは薬理的用法での酸化亜鉛の添加は禁止となり、必須ミネラルとしての添加のみ可能となっている。この代替えとして、有機(ペプチド)亜鉛、四塩基亜鉛、強化酸化亜鉛、カプセル化酸化亜鉛、ナノ酸化亜鉛、硫酸亜鉛など数多くの亜鉛化合物があるが、国により利用可能なものと不可能なものがある。いずれにせよ、亜鉛化合物の投与は、腸内微生物叢を変え、腸そのものの機能も変わる可能性がある。
飼料粗蛋白質
大腸菌を含むほとんどの病原菌は過剰な蛋白質で繁殖するため、増殖する基盤を少なくすることは理にかなっている。 これを終わらせるために、浮腫病に罹患している子豚の飼料粗蛋白質量は、アミノ酸のバランスを取りながら、2〜4%下げる必要がある。
同じ効果で、飼料蛋白質の消化率を上げると、後腸に到達する未消化の蛋白質も減少する。
消化率の高い飼料原料、例えば、合成アミノ酸、血漿タンパク、酵素処理あるいは発酵処理された大豆ミール、高品質の魚粉、乳蛋白質などでアミノ酸を充足させることで粗蛋白質は2~3%下がる。
大豆ミール
子豚飼料から通常の大豆粕を減らすか取り除くと、浮腫症を含む胃腸障害の発生率が大幅に減少する。
通常の大豆ミールをより消化しやすい蛋白質源に置き換えると飼料費は増加するが、浮腫症を減少させることで勧められる。大豆に含まれる、非栄養性物質、豆皮が問題となる。
そのほかの植物性蛋白質原料(DDGS、菜種かすなど)もアミノ酸量が低く、繊維量が増えるために、使用する場合は、十分に消化率などを調べることを勧める。
有機酸
全てではないが、特定の有機酸は、胃腸管全体、特に胃内での細菌の増殖に適さない環境を作り出す傾向があるため、細菌に対しても非常に役立つ。 離乳子豚では、胃のpHを下げることが最も重要である。
酪酸、クエン酸、プロピオン酸などが効果的である。有機酸の乖離係数とpHを下げる効果、殺菌効果が関連しているために、その有機酸の乖離係数も参考にしたほうが良い。
粗い飼料原料
微細粒の代わりに粗く挽いた穀類を使用すると、重度の細菌感染の場合に消化管の全体的な健康が増すことが示されている。 さらに、子豚が腸疾患を患っていることが知られている場合、ペレット飼料よりもマッシュ飼料が好ましい。
繊維
経験的証拠に基づいて、食物繊維を2〜3%増やすと、多くの種類の細菌感染症に効果があることが示されている。 食物繊維を増やすには、粗挽きの大麦とオート麦が非常に効果的であり、他の繊維源よりも栄養価が高くなる。
同時に、不溶性リグノセルロースの精製された形態は腸の健康を改善することも知られているが、発酵性繊維の重要性も無視されるべきではない。しかし、成豚は、発酵繊維から揮発性脂肪酸を大腸で得ることで必要エネルギーの30%近くあるが、離乳子豚には、十分発酵させる力がないので、注意が必要である。
食物繊維の概念は近年大きく変わっている。ヒトの食物繊維には水溶性、不溶性が多く知られているが、従来の粗繊維では、十分に繊維の価値を出せないために、豚においての食物繊維は、発酵性、非発酵性繊維、あるいはNDFを話題にすることが多くなってきている。子豚においても非発酵性繊維を与えることで、腸内細菌叢、腸の状態が改善されることが報告されている。
このように、浮腫病に対応する栄養的手段を挙げたが、もう一つ、子豚がまだ生まれる前、母豚の分娩前後の大腸、特に直腸の状態も間接的に子豚浮腫病と関係している。妊娠豚舎から分娩豚舎へ移動してのち、母豚へは授乳飼料を与えるのが一般的である。授乳飼料は高栄養密度、低繊維であるために、便秘になりやすい。この滞留便により大腸菌から内毒素(LPS)、外毒素(ベロ毒素)が出てくるようである。これを何らかを通じで子豚へ移行し、下痢、あるいは浮腫病となることも多いという報告がある。このために、最近の欧州での母豚飼料に、乳牛と同じような移行期飼料なるものが提唱されている。これは高密度栄養と高繊維から成り立っている。この時の繊維は、非発酵性繊維を多くすることが進められている。粗繊維でいえば6~8%、NDFで12~14%くらいが良いとされている。
以上、浮腫病対策を十分に立てていただき、1頭でも多く、出荷できるように。
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