養豚・養鶏 技術情報 技術アドバイザー
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巣外卵(floor egg)対策について
家畜化以前、鶏はジャングルや森林に生息しており、そこで群れをなし、砂浴びをし、餌を探し、争い、止まり木で休み、抱卵するなど、自然な行動を示していた。地上生活を送る鶏は、餌を探し捕食動物から身を守るために、非常に密生した植生を好む種である。特に産卵行動中は無防備になることから、鶏は外敵から身を守り安心できる場所で産卵する。
家畜化され育種改良が進むと同時に採卵養鶏ではケージ飼育が普及し、種鶏(卵用、肉用)飼育では平飼いが定着してきた。企業養鶏では産卵された卵を効率的に回収する必要があり、種鶏場では産卵場所としてネスト(巣箱)を集卵作業し易い高さに設置した。更に、集卵における労働コスト低減化のため、ネストの卵をコンベアに移動させ自動集卵するオートネストが普及してきた。


人間の都合で設置したネストに鶏が素直に卵を産んでくれれば問題ないが、そうでない場合がしばしばみられ、巣外卵は種鶏場において問題となっている。ネストやスラットの下、照明が当たらない所、他所より暗いところ、鶏舎の片隅、敷料が厚く心地よい場所などで巣外卵が見受けられるようである。
理想的な巣箱は4本足に天板を置いた座敷机のような台の下に厚い敷料を敷くことで実現でき、鶏は安心できるのかその下でよく産卵に利用するといった話を養鶏業界の先輩方から聞いたことがある。しかし、卵の回収作業は大変で企業養鶏には不向きである。
● 卵の防御機能;
卵にはクチクラ、卵殻、卵殻膜及び卵白などによる防御機構が備わっている。
・クチクラ;
卵殻の表層はケラチン様タンパクであるクチクラの薄い膜が覆っている。この膜は産卵直後の卵への微生物の侵入阻止には役立っているが、洗えばすぐとれ、破れやすい。クチクラ損失は卵内への細菌侵入の危険性を高める。クチクラ損失要因として、機械的除去(洗浄、長期貯卵、卵殻表面での鶏糞蓄積、貯卵温度の上昇などが挙げられる。
・卵殻;
卵殻にはガス交換のために一個当たり7,000~17,000の気孔が存在し、これら気孔を通じて細菌が侵入する虞がある。カビはサイズが大きいことから気孔を通じて侵入することはない。気孔は卵殻に開けられたトンネルで、この長さが細菌侵入に対する抵抗性要因となっている。卵殻が薄いとトンネルが短くなり細菌侵入の虞が高まる。
Sauterら(1974)は、卵を比重1.07(貧弱)、1.08(平均的)、1.09(良好)のグループに分け、サルモネラ菌で汚染した後、経時的に卵内へのサルモネラ菌侵入度合を調べた。三種類のサルモネラ菌(S.anatum, S.derby, S.typhimurium)による侵入率の結果を平均値で以下の図に示した。時間経過とともに菌の侵入率は高まるが、比重1.07(卵殻が薄い)のグループは侵入率が高く汚染しやすいことを報告している。

・二層の卵殻膜;
卵殻膜自体は殺菌作用を有しないが、細菌がクチクラ層と卵殻を突破して侵入してきた場合の物理的障壁となる。
・卵白の化学的・物理的防御システム;
卵白には細菌増殖を抑制する二つの化学物質(アビジン、リゾチーム)が含まれる。さらに時間とともに伴いpHが上昇し、これも細菌の増殖抑制に寄与している。また、卵白の濃厚で粘性のある性質は細菌の発育を低下させるのに役立ち、カラザも細菌汚染から卵黄を遠ざけている。
時間経過に伴い、卵白は水様化し、卵黄は卵の中央から端に近づき細菌汚染の危険性が高まる。
● 巣外卵の汚染度合い・・・きれいな巣外卵はあり得ない;
健康な鶏からの適正な卵は産卵直後の時点では完全無欠といっても良いであろう。
鶏の体温は40~41℃で、そこから生み出された卵の温度でもある。ネスト或いはネスト外に産まれた卵は急速に室温(例えば20~30℃)まで下がり、その過程で気孔を通じて外気を卵内に取り込んでいる。清潔な敷料やマットに産卵された卵は、上述の防御機構が働き問題にならないが、取り込まれる外気や卵の接触面が汚染されていると卵内も汚染されることになる。
van den Brandら(2016)は、種鶏場において清潔ネスト内に産卵された種卵、ネスト外に産卵された巣外種卵及び洗浄した巣外種卵の3グループを用いた二回の実験で、それぞれの種卵由来の雛の35週令時の体重及びFCRには変化が認められなかったが、対受精孵化率低下と孵化後の初生雛体重において巣外卵及び洗浄巣外卵のグループで低下が認められたことを報告している。また、巣外卵をたとえ洗浄したところで、対受精孵化率や初生雛体重を低下することも示している。

汚染した巣外卵は受精孵化成績を低下させると同時に、孵卵中に爆発卵となり孵卵器内を汚染する可能性があり、孵化に供することは避けるべきである。
● 巣外卵対策;
ネストに産ませること、ネスト外に産ませないことの両方を行う必要がある。
巣外卵の理由は単純で、鶏がネストより魅力的な別の産卵場所を見つけたということである。一方で、それをもたらす要因は複雑で、飼育環境、照明、訓練、敷料の厚さ、換気、空気の質、飼育スタッフなど様々な要素によって、鶏が設置されたネストに魅力を感じていないということである。巣外卵を減らすための対応策は、多岐にわたると言えよう。
・早期に育成段階で止り木設置;
スラットを介してネストを利用する訓練のため、止まり木をできるだけ早く育成段階で設置する必要がある。止まり木を早く設置すればするほど、巣外卵の発生率を減らすことができる。
J. Brake(1987)は、孵化時から20週令の育成期間を通じて高さ52cmと75cmの止り木を設置した群と未設置の群における巣外卵発生率を比較する実験を二回実施した。その結果、止まり木のある環境で飼育された鶏群は、止まり木のない環境で飼育された鶏群と比較して、25~65週令累計の巣外卵発生率が有意に減少したことを報告している。

また、両鶏群とも巣外卵発生は産卵初期に高く加齢に伴い減少する傾向を示したが、育成期間中止り木の無い環境で飼育された鶏群の巣外卵発生率が高く推移したことも報告している。

鶏たちにネストを使ってもらうためには早期育成段階からの訓練が必要である。
・育成鶏の成鶏舎移動;
鶏が成鶏舎設備に慣れる時間が必要なことから、育成鶏の成鶏舎への移動は初産の数週間前には実施すべきである。
Dorminey(1974)は、成鶏舎への育成鶏移動週令の相違(23週齢、18週齢)が巣外卵発生率に及ぼす影響を調査し、18週令に比較して23週令時移動群の巣外卵発生率が高くなることを報告している。産卵初期に巣外卵発生率は高く、週令が進むにつれて減少するが、23週令移動群は18週令より高く推移し、64週令までの累計巣外卵発生率でも1.56%と18週令(0.62%)の2.5倍となった。

・床面敷料の厚さ;
床に産ませないために「なるべく居心地のよくないレベルで、足裏損傷を防ぎ乾燥を維持できる厚さ」が望ましいが、具体的な指標はない。2-3cm程度で様子を見ながら調整することを推奨する。また、舎内を見回り、居心地の良さそうな床面の敷料を取り除く日常的作業も求められる。
・鶏舎内照明;
鶏舎内照明は鶏の活動に十分な照度*で地面に影ができないように均等に配置し、ネストの真上や中に光が当たらないようにする。
*Aviagenは育成期10-20lux、成鶏期最低20luxを推奨している。
・定期的な巣外卵回収;
巣外卵は定期的(最低1日4回;多いほど良い)に回収する必要がある。
鶏はその生来の行動(集団営巣)により他の鶏の卵を見つけるとその卵の上に座り自身の卵を産みたがる。これは卵を産みたいという自然な行動によるものであるが、同時に其処が産卵に適した安全な場所で、前の卵が邪魔されず残っているため自分の卵も加えることができると考える。巣外卵が長く放置されるほど、他の鶏も床に産むようになる。
定期的に鶏舎内を巡回し、巣外卵を見つけたら速やかに回収し、鶏舎内に残さないようにすることでそこが産卵に適した場所ではないことを鶏たちに教える必要がある。
・点灯と給餌開始時間;
Wiebke Icken(2011)は赤玉鶏と白玉鶏の産卵分布を調査し、赤玉鶏では点灯開始2~6時間後の4時間で、白玉鶏では4~8時間後の4時間で鶏の80%以上が産卵していたことを報告している。

この4時間の間に何らかの妨害行為があると、巣外卵の原因となりうる。給餌給水は大きな妨害要因で、給餌給水をこの4時間に集中させると、鶏はネストに産卵せず摂餌・飲水を優先してしまう。鶏種特性に応じて、産卵集中時間帯を避けた点灯後の給餌時間を設定すべきである。
育種会社Aviagenは、点灯後6時間で77%が産卵しているという鶏種特性から、点灯後30分以内もしくは6時間後の給餌を推奨している。
点灯開始と給餌開始の時間差が巣外卵発生率に及ぼす影響に関しての詳細報告はあまりないようである。筆者自身、産卵初期(24-31週令)における点灯後の給餌開始が40分以内の群と100分以上経過した群との比較で、100分以上経過した群の巣外卵発生率は40分以内の群の約3倍を示す事例を経験したことがある。
点灯後もしばらく給餌がなく鶏群が落ち着かないといった状況は、巣外卵の増加要因になり得るであろう。
・飼育密度及びネスト当たりの羽数;
何れも許容範囲を超えないようにする。育種会社Aviagenは、鶏群全体で平米当たり5.5羽を超えない飼育密度、手集卵ネスト1個当たりメス3-4羽、自動集卵ネスト間口1m当たり最大メス40羽を推奨している。
利用できるネストが見つからず、産むのに相応しい場所を探して止む無く床に産むケースもある。この場合、通常より卵管内滞留時間が長くなり、卵殻表面にカルシウムが吹きかけられたような状態がみられることがある。更にその結果として、その後に産卵された卵の卵殻質に影響を及ぼすことがある。スラブサイド卵(A&B卵)などである。

・ネスト管理;
汚れたマットや敷料は新しい清潔なマットや敷料と交換して、鶏にとってより快適なネスト環境に整える必要がある。また、就巣鶏などネスト内に鶏が留まるのを防ぐため、消灯1時間前に巣を閉じ、点灯1時間前に巣を開けることが推奨される。
自動集卵ベルト設置ネストの場合は、給餌中にベルトをゆっくりと作動させ、産卵ピーク後は、1日に30~60分余分にベルトを作動させることで鶏を慣れさせることも推奨される。
・ネストへのアクセス確保;
給餌ライン・飲水ラインは鶏のネストへのアクセスを妨げないように配置する。
・空気の質;
清潔な空気を均質に循環でさせ、ネスト内への隙間風を避ける。
主にブロイラー種鶏場における巣外卵について述べてきた。現状、採卵養鶏ではケージ飼育が主流であるが、最近では動物福祉に基づくケージフリー(単層平飼い、エイビアリーなどの多段式平飼い、フリーレンジ、有機飼育)採用の動きもある。

世界鶏卵機関(World Egg Organization : WEO)は2024年の日本のケージフリー(単層平飼い、エイビアリーなどの多段式平飼い、フリーレンジ、有機飼育)飼育羽数割合は3.5%と報告している。現状飼育羽数は僅少であるが、動物福祉の観点から市場が望めば増加するであろう。
畜産の情報(2026年2月)による米国事例では、2015~16年にかけて外食・小売大手が相次いで2025~30年を期限とするケージフリーへの完全移行を宣言したことにより、他企業の移行宣言や更なる州規制の制定にも波及し、移行の加速につながった。その結果、2025年9月時点で、有機・非有機を合わせたケージフリー卵は、採卵鶏飼養羽数ベースで45%を占め、米国農務省(USDA)によると、同割合は消費者需要の高まりから今後も増加傾向で推移すると見込まれているとのことである。
採卵養鶏でも食用卵としての巣外卵(floor egg)問題が浮上する可能性がある。
【参考文献】
麻布大学「ケージフリー採卵養鶏調査」報告書2025 年
畜産の情報2026年2月
BRAKE, J.; Influence of Presence of Perches During Rearing on Incidence of Floor Laying in Broiler Breeders, Poultry Science 66:1587-1589, 1987
DORMINEY, R. W.; Incidence of Floor Eggs as Influenced by Time of Nest Installation, Artificial Lighting and Nest Location, Poultry Science 53: 1886-1891, 1974
ICKEN, WIEBKE,; Selecting for better nest acceptance, World Poult.Vol.27, 2011
O’FLAHERTY, EMMA; CONTRIBUTING FACTORS TO FLOOR EGG ISSUES, 2018 Nuffield Scholar
ROSS BEST PRACTICE- FLOOR EGGS 2015
SAUTER, E. A. and PETERSEN, C. F.; The Effect of Egg Shell Quality on Penetration by Various Salmonellae, Poultry Science 53: 2159-2162, 1974
Van den BRAND, H., SOSEF, M. P., LOURENS, A., and Van HARN, J.; Effects of floor eggs on hatchability and later life performance in broiler chickens, Poultry Science 95:1025–1032, 2016
YALCINALP, MERT; Broiler Breeder Management to Minimize Floor Egg Production – Cobb Turkey