乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー
テーマ6 牛本来の動きを理解した飼養管理(10回)
【1回目】牛は周りを見渡せるが高低差は難しい
敵を発見するため体で察知する
牛は草食動物なので肉食動物から身を守るため、体の中にいくつかの機能を有している。肉食動物などの敵を早く見つけて、逃げる態勢をとるためにも広角レンズが必要になる。目は顔の横について眼球が大きく出て、視野は人の180度と比べて300度を見渡すことができる。
一方、肉食動物の目は真正面について獲物からの距離を判断、瞬発力で仕留めたり諦めたり、いつまでも追いかけることはしない。
牛は真正面と真後ろが見えないため、人がその位置に立つと体を左右にずらして物体を確認する(写真)。

それでも視野に入らない時は尻尾を激しく振って、死角となっている相手の存在と距離感を判断、後方をセンシングしている。
耳は真横に付いており、正面を見ているときは前方へ向け、視野に入らない後ろは後方へ向けて様子を伺っている。敵を発見するため目だけでなく尻尾や耳など、体全体で物体を察知しているのだろう。
周りを見渡せ安心感を与える
発情や体調不良などの異常牛を発見するため、管理者から牛が見えるところへ事務所を配置する酪農家が増えてきた。逆に、牛からも周りを見渡すことで安心感を与え、新たな機器や施設でもスムーズな動きになる。
乾乳施設から分娩施設が離れている場合、移動によって乾物摂取量が9%低下する(Schirmann 2011)。両群は同じ施設内の隣接したペンが望ましく、視覚による環境変化をできるだけ少なくすることで周産期病が減る。
フイーダーステイションのような周りが遮断されている狭い箱の中へ入るのは、短時間であっても苦痛だ(写真)。

身動きがとれない空間は、強い牛から頭突きされることもあって、恐怖を感じ白目の割合が増える(写真)。

同様の箱型ボックスに入る搾乳ロボットは、時の流れとともに各メーカは急速に進化させてきた。出入り口は広いスペース、段差がなくフラット、真っ直ぐ入り真っ直ぐ出る動線。床面はゴムにして、金属は丸く溶接し止め金具は一切使わず、必要のないものは置かない。余計な板や機材は必要最小限になり、体にバーが当たらないタイプ。複数ロボットを設置するときは、牛にも利き手があるようで侵入方向を左右同一にする。一方、通路から自由に採食、飲水、搾乳ができるフリーカウトラフィック牛舎が増えきた・・・、など、牛の習性を理解しながら自然な動きを導くように変わってきた。
牛はロボットの中で何をやっているか、周辺の空間が広いか、混雑しているか、空いているか、確認できることが重要だ。逆に、治療や授精など処置するところは、牛から作業状況が見えないレイアウトする。
搾乳ロボットは人が関わらないため、人工的な施設の中ではストレスのかからない搾乳システムだ。パーラーでもロボットでも自発的に入るかは、周りを見渡すことができるか、安心感を与え魅力的な搾乳スペースかどうかだ。
遠近や高低の判断が難しい
草原では傾斜があるもののほぼ平らかなだらかな丘で、障害物や段差がついているところは少ない。草食動物の目は左右が極端に離れていることもあって、遠近感や高低を見抜くことはできず焦点があわない。蹄浴槽は水の深さが分からない、水が光に反射・・・、など、多くは躊躇してしまう。
頭の突き出すスペースの下に少しでもへこみ(凹)があると深い溝と認識、ストールで横臥する割合が低くなる。繋ぎ牛舎でパドックや放牧へ出し、通路から牛床へ戻るとき尿溝の前で立ち止まる。時にはジャンプしてこける牛もおり、人が考えている以上に尿溝は深い谷底に見えるようだ。
畜舎の出入り口の下り坂通路は苦手で、動きを制限するため段差は禁物だ(写真)。

特に、乾乳牛は泌乳牛と比べて体が重く、ふんの水分は少なく、牛床へ盛り上がることがない。そのため、乾乳牛舎における牛床の高さは可能な限り低く、10cm以下がスムーズに出入りを可能にして理にかなっている(写真)。

逆に、高低差が1~3cm程度の高さは判別することができず、「つんのめる」危険性がある。牛の目は周りを見渡せるが、高低差の判断は難しいことを頭に入れた施設設計と管理をしたい。
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