乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ3 乳牛の分娩前後をスムーズに移行(10回)

【参考】分娩前後にバイパスグルコースを給与する

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乾物摂取量の落ち込みが大きい

乳牛の乾物摂取量は分娩一週間前から急激に低下、分娩後2週間まで回復しない。乾乳期間は12~13㎏で推移するものの、分娩時は7~8㎏まで落ち込み、その後、徐々に喰い込むが20㎏に達するのは15日目ほどだ(図)。

初産牛より産次が進むほど、過肥牛ほど落ち込む度合が大きい。これが原因でケトーシスなどの周産期病へ繋がり、繁殖まで悪影響を示し、酪農家にとって大きな損失になっている。

母牛は分娩が近くなると、
①採食量は減って給与量の3割以上の残食がでる。
②採食回数は変わらないが時間は4割ほど減る。
③反芻は次第に少なく当日はほとんどなくなる。
④横臥する時間は減り、頻繁に寝たり起たりを繰り返す。
⑤排泄しないのに背中を丸めたり尻尾を上げたり不自然な動きをする。
⑥床の臭いを嗅ぎまわり生むポジションを隅の壁際周辺を探す・・・
などをモニターできれば12時間以内に分娩することを覚悟しなければならない。

さらに、立ち上がっては寝て、立ち上がっては反対側に寝る行動を頻繁に繰り返す。一日の寝起きの回数は通常10回程だが、一週間前から急激に増えて前日は18回まで増える。分娩前の寝起きは体の後躯や前躯を上下にしながら中途半端な姿勢を保ち、胎児の位置を正常に戻しながら子宮捻転や胎児失位を防いでいる(写真)。

肢蹄の悪い母牛は寝起きの回数は少なく、一方向の姿勢が長くなり逆子が増える。我が子を安全に排出して、元気に育つようにする動きはすべての生き物の本能なのであろう。


分娩後の体調は乳へ反応する

牛は分娩後の体調の変化を動きや乳へさまざまな形で反応表現する。分娩後にエネルギーがマイナスとなり、糖質や糖原性アミノ酸が代謝され生体維持に使われる。体脂肪に蓄えられた中性脂肪はホルモン感受性リパーゼによって分解され、非エステル型脂肪酸(NEFA)が生じ肝臓に動員される。

さらに、エネルギー不足が生じた場合は,過剰なNEFA はアセチルCoA を経て、結果的にケトン体の産生に回る。これが多くなると臨床性ケトーシスに罹患するので、潜在性の段階で見つけることが求められている(写真)。

北海道では2018年からケトン体であるβヒドロキシ酪酸(BHB)を乳で分析、情報提供が行われている。
BHBは乳と血の相関が高く、泌乳初期ほど両者の関係がパラレルだ。高ケトン体のガイドラインはBHB0.13mmol/L(血液1.2mmol/L)以上を潜在性ケトーシスとした。

この数値が高まると、食欲低下、反芻や消化管運動が減少し急激に痩せていく。健康牛と比べ潜在性ケトーシスになると、乳脂率が高く乳糖率が低く体細胞が高くなる(表)。
牛の体から発信する数値なので価値が高く、飼料設計の組み立てなど飼養管理に生かすべきだ。


バイパスグルコース製剤を給与する

分娩前後の乾物摂取量減少に対して、肝臓に負担をかけずエネルギー不足を最小限に抑える必要がある。
ルーメンをバイパスさせて小腸で吸収させるようにグルコースおよびフラクトースを消化性の高い油脂でコーテイングした製剤が開発された。2種類の糖は吸収スピードが異なり、エネルギー不足を最小限に抑えることが期待できる(商品名 リポアクティブGlu60 写真)。
移行期の分娩前3週間~分娩後3週間、およびヒートストレス時に1日1頭当たり150~200g給与する。


 K大型牧場は代謝プロフアイル実施、その結果、給与することで血糖値の維持とケトン体(BHB)の上昇抑制効果が認められた。マグネシウムやコレステロールの低い牛が多い傾向にもかかわらず改善、肝機能のGOT,GGT、他の血液性状に差が認められなかった(表)。


 一方、4牧場で同一牛27頭にバイパスグルコース(BG)を給与、現場試験をした。初回検定時における前乳期(無給与)と今乳期(給与)の乳成績をまとめた(表)。

乳量6.9㎏、乳タンパク質率0.12%、脂肪酸組成のデノボ脂肪酸2.0%ほど高くなった。産次補正はしていないが、乳量、乳成分だけでなくルーメン環境を改善する効果があった。
さらに、分娩前後のエネルギー補給もあり、初回授精日が8.5日も早くなっている。嗜好性に問題はないが、濃厚飼料などと混ぜているケースが多く酪農家の反応も良い。

分娩前後は嗜好性の高い粗飼料を給与、ミネラルバランスをとり、好きなときに喰べ飲み、自由な休息・・・ストレスを最小限にすべきだ。それでも周産期病に悩むようであれば、バイパスグルコース製剤を給与する価値がある。

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