乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ2 牛の健康はルーメンの健全にすることを最優先(10回) 

【9回目】デノボ脂肪酸でルーメン活動を判断する

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乳で健康と乾物摂取量が明らかに

 従来、乳脂率は%で表示されているが、その脂肪酸はどこが起源なのかは理解できなかった。技術の進歩で乳成分測定機でも高精度に分析することが可能になり、乳で健康と乾物摂取量が明らかになった。

 脂肪酸は複数の炭素が鎖状に繋がった形をしており、その数と二重結合によって種類を決定できる。
これらはその起源に応じて、3つのグループに分類することができ、

①粗飼料の繊維などルーメンのVFA(揮発性脂肪酸)である酢酸や酪酸から乳腺細胞で合成されるデノボ脂肪酸(De novo FA)
②飼料及び体の脂肪で血液から取り込む既成のプレフォーム脂肪酸(Preformed FA)
③双方からのミックス脂肪酸(Mixed FA)で構成されている(図)。

つまり、乳脂肪率が高いからといって誇れるものではなく、どこから生成された脂肪酸なのかが問題になる。


デノボの低下は問題牛やストレスが

 通常、搾乳ロボットを導入している酪農家は、ロボットとパーラーの2つの搾乳システムを有している。
健康牛はロボットで搾乳するが、乳頭配置だけでなく年齢の高い牛、疾病の牛、肢蹄の悪い牛などの問題牛をパーラーで搾っている。

 図は上記の群分けをしている酪農家3戸のロボット牛群と、パーラー牛群のデノボFAを6ケ月間追跡した。
いずれも、健康牛と想定されたロボット牛群はデノボFAが高く、28%以下の個体牛割合は低かった。

 一方、北海道のバルク乳脂肪酸組成について、一年間を通して月旬別の推移をみた。
デノボFAは29%で推移したものが8月は27%台まで低下、逆に、プレフォームFAは35%が39%まで高くなっていた。7~8月の暑熱時はデノボが低下し、乳脂率は下がる傾向を示した。
このことから、デノボはルーメン活動と一致することが現場で確認できた。


産褥牛はデノボが低く繁殖に悪影響が

 図は個体牛の分娩後経過日数別、脂肪酸組成における2本の動きを示している。

一乳期でみると、デノボ(De novo)FAは山型、プレフォーム(Preformed)FAは谷型に推移している。分娩後60日以下はデノボが低くプレフォームは高く、個体牛間のバラツキが大きい。

 分娩1ヶ月間のデノボFA 22%以下(n=43)は3ケ月後に授精していない牛が49%、除籍した牛が16%。
同様に、28%以上(n=45)は未授精牛が33%、除籍牛が0%であった。
このことから、デノボFAはその時の状態だけでなく、数か月後の繁殖や除籍にも影響していることが理解できる。

 では、分娩後、デノボが極端に低い牛は、その後回復するのだろうか。
低い牛48頭(De novo FA 21%)を追跡すると、1ヶ月後28%、2ヶ月後31%まで上昇していた。
産褥期は低くても経過日数とともに、体調が良くなれば乾物摂取量は増えてくる(写真)。


ルーメン活動を着眼して改善策を

 脂肪酸組成をみながら、デノボFAの低い牛は群全体なのか、乳期や暦月で偏るのか・・・。
酪農家個々で異なり、どこの時点でルーメンの健康が損なわれているか、焦点を絞って改善点を見出すべきだ。
乳期で異なるため、分娩後60日を基点に泌乳初期と中後期に分けて北海道における指標値を示した(表)。

分娩後60日以下牛ではデノボFA22%以下、プレフォームFA50%以上、同様に61日以上牛ではデノボFA 28%以下、プレフォームFA 38%以上で、各項目において2割ほどの牛がこの範囲を逸脱する。
ただ、乳脂率が極端に高い牛から低い牛がおり、デノボMilkは全乳期0.9%以下とした(北酪検)。

現場で個体牛を確認すると、次の5パターンに傾向が分かれる。

1)分娩後1ヶ月以内のプレフォームFAが高い牛は、肥り過ぎによるルーメンの動きが鈍く、乾物摂取量不足で体の脂肪を動員している。
2)泌乳初期のデノボFAが低い牛は、周産期病で体調が回復できず、泌乳ピークに摂取量が追いついていない。
3)乳期に関係なくデノボFAの低い牛が点在する場合、肢蹄の悪化で寝起きの回数が少なく、固め喰いや選び喰いが行われている。
4)群全体のプレフォ-ムFAが高い場合、暑熱や寒冷対策が十分でないか不飽和FAを多く含む副産物や油脂を給与している。
5)群全体のデノボFAが低く個体牛がバラツク場合、粗飼料の品質が悪い、給与技術が低い、飼料スペースが狭い・・・、十分に喰い込めないことを意味する(写真)。

全国各地で脂肪酸組成の分析が行われつつあり、牛の健康とルーメンの動きをデノボ脂肪酸で活用して頂きたい。

 

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