乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ2 牛の健康はルーメンの健全にすることを最優先(10回) 

【参考】ルーメンの動きを糞洗いで確認する

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ルーメンの動きが判断できる

 酪農に関するモニタリングはボディコンディションスコア、ルーメンフイルスコア、肢蹄、毛づや、乳房の色がある。その中でも、牛の健康やルーメンの動きは極めて重要で、糞の状態によって判断すべきだ。現場でも「軟便になった」、「とうもろこしの実が目立つ」という言葉が頻繁にでてくる。

 しかし、多くは感覚的のものであったが、今回は器具を使って糞を洗い、客観的に判断ができる。摂取した飼料は 2日、一日12回ほどで糞として排泄するのでリアルタイムで明らかになる。量は初産牛で35kg、2産以降牛で50kgにも及び、NDF(粗飼料)摂取量と高い相関がある。
 洗うことで、未消化飼料の残渣物が確認でき、現場で飼料の消化状態を簡易的にルーメンの動きが判断できる。
 ダイジェスチョンアナライザーは、2段の篩(上段5㎜、下段2㎜)によって構成されている(写真①)。

先ず、数頭の糞1,000gを採取、上段にのせ篩から滴る水が透明になるまでシャワーヘッドを使って洗い流して残渣物の状態を確認する。


残渣物から消化状況が推測できる

 糞洗い後は写真②∼⑤のように、上段の篩に未消化の繊維と穀類が観察される。良好な状態は上段の残渣物が少ないことがベストだ(写真②)。

腸管粘液であるムチンやヘドロ状の残渣物、未消化の繊維、穀類が多く観察されるとルーメン活動が悪い(写真③∼⑤)。
 写真⑤はクラッシャー(破砕処理装置)をかけていない搾乳牛の糞の状態だ。牛群全体で未消化の穀類が多く、アシドーシス傾向で、蹄を痛めている個体牛が多く観察された。

 ヘドロ状の残渣物が観察される場合はルーメンで消化されなかった穀類が、大腸で過剰発酵する大腸アシドーシスだ。ムチンはヘドロ状と同様だが、ルーメン内の環境が荒れて未消化の飼料が下部消化管により、過剰発酵で腸粘膜の剥離が起きている。

 暑熱・寒冷ストレス、移行期など飼料の変化、乾物摂取量が低い、穀類(濃厚飼料)が多い、粗飼料の質が悪い、サイレージの切断長、飼養密度が高い、跛行牛が多い、・・・・などが推測できるので焦点を絞って改善すべきだ。


子牛は粗飼料摂取量が確認できる

 成牛での糞洗いを行っている事例は数多く見られるが、子牛での報告は少ない。
写真④は離乳前の子牛の状態で、繊維がほとんどなくヘドロ状の残渣物と穀類が観察される。

 写真⑥は離乳後1ヶ月の個体で糞洗いをした際に観察された腸管粘液のムチンだ。

摂取した育成用飼料がルーメンで十分に発酵されず、未消化のデンプンが腸に移行して消化性の下痢である大腸アシドーシスと推測した。

  北海道で行った子牛の離乳前後の糞洗いの結果であるが、経産牛と比べ残渣物の量が少ない。
写真⑦は離乳前、写真⑧は離乳後1カ月で、離乳前に比べると下段量は多く粗飼料の採食量が増加している。子牛で糞洗いを行うことで粗飼料の摂取量や、ルーメン機能の発達状況を観察することができる。


活性型酵母で糞の残渣物が変わる

 写真⑨はS牧場のActisaf(活性型酵母)給与前後(搾乳牛)における糞洗いの結果である。
残渣物の上下段割合は上段69%:下段31%だが、給与1ヶ月後は上段41%:下段59%と変化した。乳量は給与群の平均で一日1.8㎏増加しており、上段の未消化物の消化率が向上したと考えられた。

 アクティサフはルーメン内の酸素を吸収することで、微生物が棲みやすい嫌気状態へ安定化させる。繊維消化細菌、乳酸利用菌の活性が高まり、アシドーシスが発生しづらい環境づくりをサポートする。ルーメンの健全性を維持することはVFA(揮発性脂肪酸)の産生、乳量と乳脂肪が増加したと推測できる。

 糞洗いは各牧場、各ステージの状況を経時的に観察することで、簡易的に評価でき問題を解決するアイテムだ。
飼料設計のメニュー変更、添加剤給与など、飼養管理対応の方向性を見出せる。可能であればパーティクルセパレーターを用いた粒度分布の確認できれば望ましい。
飼料高騰が続いており、給与した飼料を無駄なく効率的に利用されるためにも糞洗いを是非実践して欲しい。

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