乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー
テーマ6 牛本来の動きを理解した飼養管理(10回)
【2回目】牛は視力が劣るので明るさを意識する
牛は広い草原を見渡す生き物だ
牛は広い草原を見渡す生き物で、逃げ場がない、狭い通路、障害物、光る物体、袋小路、異臭・・・なところは苦手だ(写真)。

日頃と異なる物体が視界に入ると行動が制限され、目的を達成するのに時間を要する。同一飼槽で、ません棒のエリアはTMRの減りが速く、ジャングルジムのような連動スタンチョンのエリアに残飼が多い。飼槽でも水槽でも、複雑な構造は食べること、飲むことも必要最小限になる。
家畜運搬車へ牛を乗せるとき、前方の一人が頭絡(もくし)のロープを引っ張り、後方のもう一人が尻を押す。牛は前後が確認できないため頑固になって動かず、人が無理に移動させようと悪戦苦闘している姿に遭遇する。明るく広いところから暗く狭いところへ、しかも地面とあおりとの境目で恐怖そのものだ。今まで経験がなく、得体の知れないところへ連行されると察して当然の動きをとる。
牛は肩のキ甲部のところを起軸として、それより人が前へ行くと後ずさりして、その軸より後ろへ行くと前方へ進む。目的地へ誘導するには、体のやや後方から背中を軽く叩くことで意にそうようだ。
視力は劣りほぼ色盲に近い
人の視力は1.0が標準となるが、牛は0.04程度と言われており極端に悪い。周辺を見渡すことを優先して、細かなところに焦点をあてる必要がないからなのだろう。
牛は草の色である青と、土の色であるグレイくらいは識別できるようだが色を見分けることは難しい。白黒写真を想定し通路に尿が溜まっていると黒く得体のしれない物体に、白い部分は浮き上がった壁に映るようだ(写真)。

暗いところから明るいところへ移動や、朝と夕方で光が入り込む度合いが違う通路は戸惑う。パーラーの帰り通路やフットバスを通過時に躊躇するのであれば、時間帯での光の反射を点検すべきだ。モノクロの世界と考えるべきで、通路に明暗、水溜りの反射、ロープなどの障害物は恐怖を感じる。頭の突き出すスペースの下に少しでもへこみ凹があると深い溝と認識、ストールで横臥する割合が低くなる(写真)。

闘牛シーンを眺めていると、赤い布のときだけ牛が突進するため色を判別できるイメージがある。しかし、牛は色盲であるため、闘牛士は赤いときだけ、ヒラヒラ揺らして興奮を煽っているのだ。牛は視力が弱いことを頭にいれて、畜舎設計や管理をすべきであろう。
明るいところで採食行動をとる
牛は視力が弱いこともあって、明るい所で草を食べ、暗い所で採食意欲を落す習性がある(写真)。

牛舎の屋根を手前半分が半透明のユーピロン、奥半分が遮光の鉄板であれば、半透明の明るい場所に集中し採食する。早朝に積極的な採食行動がスタート、夜間は横臥する生き物なので、給餌作業は朝早くすることが望ましい。
ほ乳ロボットは夜間の訪問回数が少なく、ミルクの飲み残しがある場合は暗いことが一因だ。ある搾乳ロボット酪農家はタイマーの設定ミスによる停電で、1時間以上真っ暗になったときは訪問がまったくなかったと話す。
暗い時間帯では障害物を嫌って、牛は恐怖を感じて動きを制限したのだろう。肉食獣から襲われやすいため、明るく周囲がよく見えるところで草を食べ、お腹がいっぱいになったら安心できる暗いところで寝るのが本来の姿だ。
フリーの牛舎でわずかな灯りがあれば、親牛は生まれたばかりの子牛を踏むことはないが、真っ暗な状況では新生子牛を踏む。暗過ぎると近寄ってくる人を確認できず、牛は気配を感じて全力で駆け出す。
牛舎の明るさは多くが16~18ルクスほどであり、労働安全衛生基準規則では作業をする70ルクスに達していない。牛だけでなく、人も牛舎で発情牛や分娩牛を発見できように、新聞の文字を読む明るさが必要である。
最近は自動制御の照明システムが導入、明るい16時間、暗い8時間になるよう設定して乳生産を拡大してところもでてきた。フレッシュ牛側からの光が乾乳牛エリアに入らないように、光周期コントロールを始めたことで、ピーク乳量が増えたと話す。牛は視力が劣りほぼ色盲に近いことを認識、明るさを意識した管理をしたい。
-
【テーマ1】分娩後の体脂肪動員・泌乳前期のエネルギー充足(8回)
-
【テーマ2 】牛の健康はルーメンの健全にすることを最優先(10回)
-
【テーマ3】乳牛の分娩前後をスムーズに移行(10回)
-
【テーマ4】牛の快適性を追求して健康と乳を最大にする(10回)
-
【テーマ5】管理によって子牛の健康と良好な発育(10回)
-
【テーマ6】牛本来の動きを理解した飼養管理(10回)