乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ2 牛の健康はルーメンの健全にすることを最優先(10回) 

【1回目】大きなルーメンを健全に働かす

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大きなルーメンが武器だ

 牛は消化しづらい草を重なり合った4つの胃で反芻し、消化・吸収をしている。ルーメンは胃全体の80%を占めており、体積は160リットル以上もある。 食道と直接つながっており多数の微生物が共生し、発酵・分解によって植物の繊維を栄養素として吸収することができる。

 巨大なルーメンスペースは、採食行動を活発にして貯蔵量を確保し乾物摂取量を高める。それには、容積の少ない穀類ではなく、ガサがあり滞留時間が長い繊維(粗飼料)を蓄えることが可能になる。

 表は酪農家乳量別行動の違いを示している。乳量が高い酪農家ほど採食時間、反芻時間、横臥時間が長かった。
 子牛が成牛になると、体高は80cmが140cmと1.7倍だが、体重は40kgが650kgと16.3倍になる。このことは、丈より肋が張って縦より横が伸びて、ルーメンが大きくなっていることを意味する。
生き延びるために他の動物と異なる点は、莫大な飼料を貯蔵できる機能を持っていることだ。ルーメンという、一時的に大量のエサを溜め込むことができる臓器は、他の生き物にはない大きな武器だ。


日中は採食して夜間は横臥する

 牛は日の出とともに喰べ始め、日中は12時間以上もひたすら喰べ続ける。そして、夜は静かなところで、母体に子牛を寄せながら、ゆったりと反芻しながら寝る生き物だ。寝るといっても熟睡することなくウトウトした状態で、常に周りの動きを察知している。これは自然界において、外敵から身を守るためのもので、生き延びるための知恵なのであろう。
 牛は一日の中で喰べる、寝る行動を繰り返し、目的のない漠然とした動きはしない。人工的施設ではパーラーで搾乳するときや、人工授精や治療のため待つことが頻繁にある。

 表は酪農家における一頭あたり飼槽幅と一日の採食時間を示しているが、70㎝以上は牛群全体、特に初産牛の採食時間が長い。経産牛300頭の採食行動を3日間、夜の飼料給与後に1時間間隔で調べた。
パーラーから帰ってきた7割ほどの牛が採食しており、1~2時間後に横臥、その後、5~6時間後に再び飼槽へ並んでいる。しかし、初産牛は経産牛と比べて給与直後だけでなく、夜中にも採食姿勢が観察できた。夜は横臥行動をとるものだが、弱い立場の初産牛は日中喰い負けするため行動なのであろう。


時間をかけて少しずつ喰べる

 自然界では草原に豊富な草が確保されていないこともあって、喰べることに長い時間を割かなければいけない。少しずつ繊維の多い草を長時間かけて摂取することは、ルーメン内発酵を適度に保つ。粗飼料中心のエサであるため、積極的な反芻行動でアシドーシスを引き起こすこともない。
消化率の高い穀類を固め喰いや選び喰いがなければ、ルーメン内のpH、プロトゾアなどの微生物叢の変動が少ない。微生物の居住環境はルーメン内で飼料が滞留することで、栄養を取り込み増殖させる。増えた微生物は栄養価の低い植物を優れた動物性タンパク質に変換する。

 牛は採食後、3時間経過すると空腹を感じる生き物で、飼槽にエサがない状態はその時間が限界と言われる由縁だ。酪農家の中には5時間以上も飼槽が空白か、とうもろこしの芯だけということが見受けられる(写真)。


活性型酵母の添加で乳量が増えた

 S牧場はフリーストール、ロータリパーラー、搾乳542頭を飼養している。個体乳量9,387㎏、乳脂率3.87%、乳タンパク質率3.32%、体細胞161千個、分娩間隔390日の成績だ。

 高乳量の一群のみを活性型酵母(製品名 アクテイサフ)一日一頭あたり5gを添加した。
その結果、高乳量牛84頭の添加した群は前月と比べ乳量3.4㎏、前年同月と比べ4.8㎏増えた(表)。 MUNは高めであったが、乳脂率や乳蛋白質に一定の傾向はない。添加しなかった泌乳中後期牛群の乳量に差がなかった。

 設計者である獣医師と協議した結果、飼料設計はNDF32%、有効繊維24%と低いこと。切断長はグラスサイレージ及びとうもろこしサイレージが0.8㎝と短く繊維源が懸念される。
特に、とうもろこしサイレージはクラッシャーをかけており、繊維確保の19mmと長めにすることが推奨されている。このことから、高乳量で乳脂率が3.3%と低くルーメンアシドシースが疑われる。
 したがって、粗飼料の不足や質の低下が心配される牧場は活性型酵母の効果が高い。ルーメンが健全で働かすことで微生物は活動、繊維を分解し乳量は増えるのだろう。

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