乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ4 牛の快適性を追求して健康と乳を最大にする(10回)

【2回目】寝起きは喰べる・飲む・寝る起点になる

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寝起きの回数は乳量へ直結する

自然界の牛は自由に草原を歩き回って疲れたら横臥、しばらくしてから立ち上がる行為を幾度となく繰り返す。
何回にも分けて起きてエサを喰べ、水を飲み、横になり反芻に専念する。そのことが、固め喰いや早喰いを防ぎルーメン微生物が安定、ルーメンアシドーシスにならず健康を維持することができる。
喰べること、飲むこと、寝ること、それぞれの行動をつなぐ中継地点となるのが「寝起き」だ(写真)。


乳牛の寝起き回数は1日10~12回、1回の横臥は1.0~1.3時間だが乳量に影響するようだ。
日乳量0、16、32、47kgの4段階に分けると、乾物摂取量は11、21、26、28kg、飲水量は51、89、104、131kgであった。
注目すべきは起立回数だが、9.6、9.6、12.1、15.3回で明らかに日乳量と平行関係にあった。高乳量牛ほど頻繁に寝起き、横臥、採食や飲水行動を繰り返していた(表)。


現場では目的もなく漠然と起立、ベッドの端に前足だけ乗せる姿が散見される。また、横臥時間が長くなるほど乳生産に反応するようだが、寝っぱなしの行為は生産に結び付かない。
寝起きの回数は乳牛の健康だけでなく、乳量や成分へ直結する。


スムーズな寝起きを可能にする

放牧地での寝起きは自然な動きになり、牛は膝の傷や腫れもなく毛で覆われている。人工的な施設では牛床の表面素材やストールのデザインが悪いと、擦り傷や腫れが見受けられる。


牛は体が重く反動をつけないと起きられず、寝るときは体重を支えられるぎりぎりまで保ち、最後は制御できずドスンと落ちる。
テコの原理で前膝が支点になり体全体の体重はのしかかるが、この部分は骨と皮だけである。
その膝に傷、地盤が固い、床面が滑る、凸凹、傾斜、前方の障害物は膝を回転する必要があるためさらに負荷がかかる。


理想の寝起きを実現するには、動作がスムーズに出来る牛床のレイアウトを検討すべきだ。
前方は障害もなく頭を真っ直ぐ、低く前方の遠くへ突き出して起き上がれ、どこにも触れることなく倒れ込むように後躯を床面に下ろす。
乳牛の目の前に頑丈なバーがあると、前方突き出すスペースがないので横臥する牛が少ない(写真)


また、起立時に肩がぶつかたりすると、回数は減るだけでなく牛床の斜めに横臥するため余計なスペースをとる(写真)。


肢元が滑らない材質で踏ん張りが効き、草の上での自然な動作ができる床面だ。寝起きする時は前後に幾度か動作を繰り返すか、その回数が多いほど、時間がかかるほど問題だ。草原のように縦の柱や横のバーは必要最小限で、スムーズな動きを可能にするシンプルなレイアウトにすべきであろう(写真)。


今後は機能的な牛づくりを目指す

時代とともに我が国のホルスタインは大型化しており、体高は高く体が大きくなってきた。
根底に、共進会において大きな牛が有利であるため、精液選定が行われてきた。ここ数年、酪農家や育種改良関係者から、牛の大型化を問題視する動きがでている。

乳牛の維持するエネルギーは体重の4分3乗が必要で、大型の牛ほど生きているだけでエサ代が費やされる。
さらに、飼料効率が悪い、授精や移動のハンドリングがしづらい、人の怪我のリスクが高い、他の牛を威圧する・・・。


大型の牛は一般の牛と比べ、牛床の幅や長さに合わないため、寝起きが苦手で、ぎこちなく窮屈さが目立つ。
転倒時のダメージも大きく、起立不能時のトラブルが起きると対処ができない。昔と比べ、牛舎が古くなると牛のサイズに合わなくなって、採食や飲水行動が制限される。


確かに、一日の寝起き回数は泌乳牛が10回程だが、子牛は20回程で極端に増える。
搾乳牛は採食と横臥を繰り返されるべきだが、子牛はその必要はなく、体が軽いということが大きな要因だ。初産や二産牛などの軽い牛は大型で体重が重い牛と比べ、立ち上がる回数は増える(写真)。


今後、大型化より健康な肢蹄、乳頭形状や配置、搾乳スピード、気質など、時代にあった機能的な牛づくりを目指すべきだ。
このことから、寝起きの回数は乳量へ直結するので、ストールのレイアウトと牛の大きさも考慮する必要がある。

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