乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ1 分娩後の体脂肪動員・泌乳前期のエネルギー充足(8回)

【3回目】分娩後の疾病は繁殖に悪影響で大きな損失だ

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分娩後の疾病は初回授精が遅れる

  疾病と繁殖はタイムラグもあり酪農家は単独で考えがちだが、双方は密接に関連している。表は疾病記録のない牛を健康牛とすると、分娩間隔は健康牛398日、乳房炎牛425日、その他疾病牛434日であった。同様に、初回授精は81日、乳房炎牛90日、蹄病を除いたその他疾病牛94日であった。分娩後、獣医師の治療記録がある牛は初回授精が遅れ、分娩間隔が延びる傾向にある。

                             

 表は分娩後初回授精日と受胎までの回数、初回受胎率、分娩間隔の関係を示している。受胎率は51~80日が50%を超えているが、分娩間隔は初回授精日が早いほど短い。酪農家の自発的待機期間(VWP)の考えもあるが、多くは分娩後の体調不良(疾病)で強い発情がこないことが考えられる。


分娩後の乳房炎は受胎に影響する

 

 牛にとって分娩・出産・泌乳という仕事は大きく、分娩前後で管理と飼料が急激に変る。これらはすべてストレスとなり、分娩後は乳房炎を含めてあらゆる疾病に絡んでいる。牛の免疫システムは分娩前後1週間に抑制され、好中球はバクテリアを殺す能力が低下してくる。しかも、泌乳準備と低カルシウム血症等で乳頭括約筋の閉鎖を阻害する可能性が高い。乳牛は分娩後の免疫低下に陥り、血漿コルチゾール5~7倍に増加して乳房炎の発症率が高くなる。乳房炎は一乳期を平均的に発症するのではなく、分娩後集中的に発症しているのが特徴だ(1回目参照)。

 
 表は分娩後162日現在の受胎状況と分娩後の体細胞・乳房炎・除籍割合を示している。受胎した牛10頭における3ヶ月以内の体細胞は7万以下だが、不受胎牛の22頭は総じて高かった。30万以上の回数割合をみても受胎牛はゼロに対し、不受胎牛が16%であった。乳房炎の発症率は受胎牛が10%に対し、不受胎牛が38%罹患し獣医師の治療を受けていた。結果として、除籍した割合は活動で受胎牛がゼロに対し、不受胎牛が9.5%にも達していた。
 
 
 図は一地域181戸の酪農家における年間平均体細胞と分娩間隔の関係を示している。乳房炎の発症が多い酪農家は分娩間隔が長く、乳質が良好なところは繁殖も良好であった 初回種付け前に臨床型乳房炎を発症した牛は初回授精日数が71日から94日と23日遅くなった。初回種付け後に臨床型乳房炎を発症した牛は受胎までの授精回数が2.9回で、発症しなかった牛の1.6回より多かった(Hockett2001)。乳腺細胞という一局所の炎症が体全体を蝕み、乳頭から遠い卵巣や卵胞まで影響することが分かった。 牛が自然界で分娩する時はぬかるみがあり、きれいなところで外敵から見えない場所を選ぶ。人工的施設の場合、床面が汚い環境下では分娩をためらい、しばらく胎児をお腹の中に入れておく。敷き料を交換すると分娩が集中するのは、子牛を細菌から守るための本能であろう。分娩を含めて乾乳から泌乳初期の場所は清潔度を高め、乳房炎を少なくすることは受胎率も高める。


分娩前後のトラブルは受胎に影響する

 移行期の牛45頭を月2回追跡、体重、分娩状況、飼料充足、発情強弱、授精のタイミング、直検したときの卵巣・子宮の状況をチエック・・・した。 表はデータが取れた37頭について、分娩後150日以内の早期受胎牛17頭、不受胎もしくは150日以降の長期不受胎牛20頭の分娩状況と疾病を示している。早期受胎牛は自然分娩が93%(不受胎・長期不受胎牛80%)、難産双子7%(20%)、死産7%(15%)とスムーズに移行していた。胎盤停滞は不受胎・長期不受胎牛17%に対し、早期受胎牛が24時間以内にすべて排出されていた。

 
 早期受胎牛は低カルシウム血症、第四胃変位、ケトーシスが24%で、不受胎牛・長期不受胎牛の35%より低かった。同様に、肢蹄病は18%で良好、飛節は平均スコアが2.3で2.6より低く、飛節は5段階評価1が30%で7%より健康であった。
 分娩前後のトラブルは受胎までの日数が長くなり、繁殖成績を悪化させることが明らかになった。分娩後の疾病は一時的であっても、数か月後の繁殖まで悪影響を示し大きな損失だ。  

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