乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ4 牛の快適性を追求して健康と乳を最大にする(10回)

【4回目】歩行は肢蹄を良くして供用年数を延ばす

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周産期病や繁殖に好影響を示す

乳牛は1日およそ放牧地で3~4㎞、フリーストール牛舎で1~2㎞歩く生き物だ。乾乳牛を歩行運動させて、分娩前後の繁殖、疾病と乳生産を関連付けた興味深い試験成績がある。

1.ホルスタイン26頭のうち、分娩前に半分を運動させず、もう一方は時速8㎞を強制的に歩かせた。
その結果、代謝障害は運動させなかったグループが54%、運動させたグループは20%であった(D. K. Beede1993)。

2.乾乳期間中はタイストールで飼養、1日25分間、1.3kmを歩行させ拘束牛と比べた。
その結果、運動牛はインシュリン感受性が有意に上昇し、歩くことは糖代謝能を改善する効果があった(根釧農試2008)。

3.乾乳期に時間放牧させると、繋留時と比べ一定の負荷がかかり、心拍数が16〜17%上昇した。
自由に採食できるため乾物摂取量は増加し、TDN充足率が高まり、受胎までの日数、授精回数は良好であった(福島畜産研究所2005)。

いずれも、乾乳期に拘束することなく歩行させると、代謝が良くなり周産期病が減り繁殖にまで高影響を示した。
草の上は趾間や蹄壁をきれいにするだけでなく、ソフトな地面が疲れた蹄を休養させる効果が認められる。
ただ、牛舎から放牧地までの牧道が泥濘化も見受けられるので、整備していれば動きは活発になる(写真)。

蹄病は突然症状が現れるのではなく、長い期間をかけて悪化するので定期的な削蹄が望まれる(写真)。

時期は乾乳前後が推奨され、分娩4週間前は流産率が高く、ストレスを与え子宮を含めた内臓に負担が大きいので注意が必要だ。


土や草の上は肢蹄が良い

F牧場は繋ぎ牛舎で経産牛88頭、一頭あたり乳量10,171kg、分娩間隔431日、初産分娩月齢は22ヶ月である。除籍産次は4.4産、除籍頭数に対する初産・2産の割合が15%と長命連産だ(表)。

その極意を聞くと、歩くことは牛の健康に直結するとの考え方から、雨の日も風の強い日でも9~15時まで放牧地へ放す。冬期間はパドックやコンクリートへ火山灰を敷いて歩せる。
パドックは土とコンクリートの部分を設けているが、不思議と右側の土の上で横臥するという(写真)。

牛の目は魚眼レンズで地盤の表面を見分けることは難しいものの、足が沈むという感覚は皮膚を通して判断できるようだ。蹄が数センチ埋まるところを好み、コンクリートのような硬く滑る床面は苦手だ。
草原のように地盤が土や草であれば踏ん張りが効き、自然な寝起きができるからなのだろう。土や草の上の生活は発情行動が明確になり、何より体調が良く疾病が少なく寿命も長くなる。


担当する人工授精師は「毎日、酪農家を巡回しているが、F牧場は他の酪農家と比べて格段に肢蹄が良い」と話していた。多くは肢蹄病で生産が上がらず、淘汰を余儀なくされている現状からみると羨ましい限りだ。年間を通して草や土の上の生活は、コンクリートと比べ蹄がきれいで変形しない。

北海道における飼養形態別の在群期間は繋ぎ69か月(21,713頭)、フリーストール66か月(17,800頭)、放牧71か月(3,863頭)で、放牧主体の形態が長かった(北酪検2018)。


健康な肢蹄が供用年数を延ばす

乳牛は経済動物で、正確な寿命を把握することが難しい。乳生産を供するホルスタインの寿命はおよそ20歳、およそ人の4分の1歳と推測できる。

昔は10歳を越える牛も数多く飼養されていたが、今は貴重な存在になってきた。除籍産次は低下傾向にあり、北海道は2023年で3.4産まで低下しており、肢蹄病が大きな要因になっている。
現場で飼養している長命連産のホルスタインは、17歳、15産の牛を確認した(写真)。


年齢も感心するが、毎年受胎分娩を繰り返し、乳生産にも大きく寄与している。顔は白が目立ち、脇も広がっているが、肢蹄もしっかりして、農業者はもう一産搾ろうかと話していた。少なくても現状の回転からみると、4頭分以上の仕事をしている長命連産を象徴する牛だ。

搾乳牛一頭当たりの生産費の構成割合をみると、飼料費と乳牛償却費が全体の3分の2を占めている(農水省 図)。


エサ代は乳生産へ影響するが、償却費を下げ供用年数を延ばすことは酪農家にとって所得へ直結する。拘束することなく自由に歩かせ、肢蹄を健康にして牛の快適性を追求すべきであろう。

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