乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ1 分娩後の体脂肪動員・泌乳前期のエネルギー充足(8回)

【5回目】分娩後の体重の落ち込みが受胎に影響する

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体重落ち込みは乳脂率が高くなる

 
 
 上の図は分娩前後の平均体重と分娩後の落ち込み体重の関係を示している。両者の関係は正の相関が認められ、平均体重が650kgの牛は分娩後70kgだが、800kgは112kgまで低下していた。
 下の図は分娩前後に体重測定した中で最高体重と泌乳初期における乳脂率の関係を示している。両者の関係はほぼ正の相関が認められ、650kgの牛は乳脂率3.5%だが、800kgは3.9%まで高くなって分娩150いる。日まで受胎が確認できた牛の分娩1ヶ月目の乳脂率が牛3.94%であるのに対し、不受胎牛が4.67%で0.73%高かった。泌乳初期は繊維源から乳脂率の原料である酢酸と酪酸をルーメン内で大量に産生することは考えにくい。分娩後は乳生産に対して摂取する飼料が充足できず、体の脂肪を動員している可能性が高い。


分娩後の高乳脂率は潜在性ケトーシス

 図は酪農家における分娩50日以内の乳脂率5%以上割合と、潜在性ケトーシス(高ケトン体BHB)の関係を示しているが両者の相関は高い。分娩後の高乳脂率の高い牛が多い酪農家ほど、潜在性ケトーシスに陥っている可能性があ る。北海道牛群検定WebシステムDLで随時提供しているが、平均は7%程だが0%~30%まで、酪農家間で差が開いている。 図は経過日数別乳脂率の推移を示しているが、一乳期を通してバラつきが見受けられる。その中でも泌乳初期の高乳脂率がかなりの数の牛がおり、体脂肪動員と考えられる。
 給与した粗飼料の品質が悪い、床面がドロドロ、乾乳舎に多頭数入れる・・・悪循環だ。密飼いになるほど、粗飼料の品質が悪いほど、暑熱・寒冷ストレスが大きいほど牛の体調が悪い。 高泌乳牛を維持するためには、分娩後のエネルギー収支はマイナスであるがその程度が問題である。分娩に立ち会ってみて、落ち込みの度合いより期間がより深刻である。
 乾乳期に粗飼料を腹一杯食い込むことで、肋(ロク)は張り胸深が出てルーメンフイルスコアを高く、産褥期でも泌乳初期でも乾物摂取量が多くなる(写真)。

 注意すべきは腹が膨れることと肥ることとは異なり、その見極めが重要になる。乾乳時点でボディコンディションスコア(BCS)とルーメンフイルスコアが適度になるよう、泌乳期から仲間と一緒にスコアをつけてチエックすることを勧めたい。


体脂肪動員は受胎に悪影響を与える

 乳牛は分娩直後に臨床症状として反芻機能や消化管活動が鈍くなり、採食量が落ちて乳量が低下していく。その結果、エネルギー不足に陥り、脂肪組織から非エステル型脂肪酸(NEFA)を血中に放出させる。NEFA は一旦肝臓に入りその処理が始まり、組織のエネルギーのためにリポタンパク質を放出する。
 しかし、多量の体脂肪が動員されると、肝臓で処理できず血液中のケトン体の濃度が上昇し脂肪肝やケトーシスを発症する(図)。 分娩前の乾物摂取量が落ち込むのは一般的に5週前だが、痩せ牛は分娩直前に、肥満牛は長期間に及ぶ。肥った牛ほど摂取するエサの量が限られ、肝臓機能は低下し脂肪肝になる可能性が高い。
 脂肪肝牛は健康牛と比べ分娩2週以内で肝臓の脂肪沈着割合が27.1%と高く、異物排泄停滞率21.1%で肝臓機能を弱めている。さらに、分娩前後の体重差も131kgと大きく、空胎日数も長期化して繁殖障害の確率も高かった。肥っている牛は BCSが適正でも、肝臓を含めて内臓の脂肪付着は大きな問題になることを指摘している(道立根釧農試1993)。

 前述の牛で、分娩150日まで受胎が確認できた牛は分娩前の体重が745kgに対し、確認できなかった牛は786kgで41kg重かった。しかも、分娩後における体重の落ち込みが受胎牛39kgに対し、不受胎牛は73kgで大きかった。同様に、分娩後におけるBCSの落ち込みは受胎牛0.29に対し、不受胎牛は0.34と上回っていた。分娩前後における体重とBCSの落差が大きいほど、繁殖へ悪影響を示した(写真)。
 一般的に、乳脂率や乳タンパク質率である乳成分の高い牛は、ルーメンの活動量は多く健康である。ただ、分娩直後の高乳脂率は体の脂肪が乳の脂肪へ移行、その量が多いほど受胎へ悪影響を与えている。繁殖の始まりは分娩からではなく、かなり遡って乾乳期からということを認識すべきだ。

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