乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ5 管理によって子牛の健康と良好な発育(10回)

【参考】初産牛へスムーズに移行する

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初(妊)産牛は分娩前後にトラブル

酪農家は2年間かけてエサと管理をしてきて、これから戦力になると期待していた。しかし、分娩前後を境にトラブルが生じ、能力を十分に発揮できず、廃用に至るケースがある。ほ乳時は人によって管理され、優しいまなざしが注がれていた。その後、育成牛になり、広いパドックで自由が保たれ、仲間数頭のグループで飼われた。このように育てられた牛が、分娩前後を機に住むところ、喰べるもの、仲間も激変する。

表は分娩後経過日別における産次別のケトン体である高BHB(潜在性ケトーシス)牛割合を乳で確認した。分娩後7日以内は25.2%と高く、8~14日が18.8%で、経過日数とともに低くなる。

注目すべきは、初産牛(1産次)における分娩直後の7日以下は他の産次や経過日と比べて、高BHB牛割合が36.2%と極端に高く、8~14日になると16.8%まで低下していることだ。

牛は採食後に横臥するものだが、一頭だけ起立している姿が見受けられる。繋ぎでストールが満杯のため、乾乳牛舎へ移動した直後に分娩近い初妊牛を連れてきた。隣の姉さん牛に首や体を頭突き威圧され、イジメで喰べることも飲むことも寝ることもできない(写真)。
その結果、健康な若牛がふんまみれになりガリガリと痩せて第四胃変位などの疾病が発症する。


初めての施設や機器に馴らす

初妊牛を放牧から舎飼いへ移動したが、馴致が行われていなかったため、連動スタンチョンへ入らない。バーの小さな隙間から口を出してエサを喰べようと試みていた(写真)。

乾草などの長ものは引っ張ることができるものの、濃厚飼料やサイレージは連スタの首を通さないと喰べることができない。連スタは捕獲という不安感、カチャカチャという音が脅威だ。

多くの酪農家は哺乳から育成まで、飲み口の広い水槽を設置しており、すべての牛は自然に飲水することができる。出産に備えて初妊牛1頭を分娩ペンへ連れてきたが、水分を含んでいるサイレージは採食するが、乾草は喰べていない。

観察してみると、ウォーターカップの飲み方がわからず、十分な水量を飲んでいないことがわかった(写真)。

牛はカップの「ベロ」の部分を押さなければ水が出ないということを理解できない。凍結に強いボールタイプの給水器も、滑るボールを強い力で押し込むことはテクニックが必要になる。

また、フィードステーションを設置、乳量に合わせて濃厚飼料を給与し、個体管理をする。しかし、初めての牛は喰べ方がわからないため、採食量は「ゼロ」とコンピュータが知らせる。強制的に誘導することによって、数日間でボックスへ入るようになる。

ただ、後ろに“強い牛”が待つだけでなく、“頭突きでドツかれる”とボックス内で落ち着いて喰べることもできない。牛は周辺を見渡すことは得意だが、密閉した箱の中に入るのは苦手である。初産牛や移動牛など新たな施設やエサなど、初体験は脅威と感じるため馴致が必要だ。


人より仲間からの覚えは速い

牛は個より群れを好み集団内でお互い刺激しながら、能力を発揮する生き物だ(写真)。

隣の牛を真似することで新しい環境へ早く順応、競争に打ち勝つことを身につける。子牛をカーフハッチで個別に飼うと、隣の牛から学習する機会を失い、乾草やスターターの喰い込みが悪くなる。

新たな施設、機器やエサ・・・などは、個体より複数で飼っている方が覚えは早い(写真)。

子牛は単独よりペアーにすることでスターターの喰い込みが良く、自動ほ乳器への順応が早く増体スピードは速い。カーフハッチに突如、スターターや糖蜜を置くと個では警戒するが、群で飼うと早く舐める。

初体験の牛は別棟や独房で飼わず、姉さん牛が見られる位置にすることで動きを真似できる。そこでエサの喰べ方、水の飲み方、乳の出し方、移動の仕方・・・など、人より仲間からの方が覚えは速い。

育成後半は搾乳牛と同じ施設、繋ぎ方、牛床、敷料、飼槽、水槽、通路・・・事前に行うべきだ。牛の快適性を追求するというと、牛周辺の環境改善を想像する。しかし、子牛から若牛まで莫大な経費と労力をかけたことから、初妊から初産へスムーズに移行すべきだ。

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