乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ6 牛本来の動きを理解した飼養管理(10回)

【3回目】牛は臭いに敏感で新鮮さを求めている

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牛は臭覚に敏感な生き物だ

牛は草食動物なので肉食動物から身を守るため、体の中にいくつかの機能を有している。おとなしくデリケートな生き物だが、嗅覚は身を守るための武器なのだ。鼻は非常に発達しており、数キロ先の臭いを敏感に感じ取り、敵と見方を嗅ぎ分けることができる。そのため、匂いを嗅ぐ習性があり、初対面の牛同士は鼻を寄せ合い、初めて見るもの、出会うものはとりあえず臭いを確認する。

「雄牛の性行動における臭覚の役割」の課題名で東北大学が興味深い発表をしている。発情牛と非発情牛に雄牛を5m手前から放したところ、視覚は遮っても正確に発情牛を特定した。雄牛が発情牛を識別するのは、遠方からは視覚や聴覚であるが、最終的には臭覚で見分けていることが分かった(写真)。

現場でも発情牛は外陰部や尿の匂いを嗅いだ後、上唇を上に巻き上げるフレーメンという行動をとる。

繋ぎ牛舎で放牧やパドックに出して、牛舎へ帰るとき自分の牛床位置にたどり着けるのは、壁や柱から何番目と数えているのではなく臭いだと言う。ときおり、石灰塗布や牛舎清掃をすると、自分の位置を見失い右往左往する姿をみかける。新しい牛舎へ移行するとき、今まで使っていたふんまみれの敷料を牛床へ敷くことで、スムーズへ移行できるのはいつもと同じ臭いであるからだ。


車輪と人は飼槽へ入らない

臭覚と味覚は強い関連があり、飼槽のほころびや掘れていると異臭を放ち採食意欲を落とす(写真)。

表面はコーテイングを施工し滑らかにすべきで、特に夏場の水分の高いサイレージ主体の給与体系であればなおさらだ。施工は飼槽面だけをなく、pHの極端に低いサイレージが散らばる通路まで広い範囲で行うべきだ。

牛舎とバンカーサイロは近い位置で動線にふん尿がなく、トラクターの車輪が飼槽へ入らない。ふん尿が付着した長靴を履いたまま、飼槽へ人が歩くことは厳禁だ。大型酪農家では空中に人が歩きながら牛舎内を上から一望というキャットウオークを設置しているところがある(写真)。

牛の状態をモニターすることが目的だが、視察者が飼槽に汚い足を踏み入れるのを防ぐ効果もある。

クリーンゾーンとダーテイゾーンを明確に分けて管理している酪農家もおり、臭いに関して細心の注意を払う必要がある。光や音はカーテンや耳栓で遮ることもできるが、鼻は閉じることができないので臭い本体を減らすしかない。

個々を最終的に識別するのは人が指紋、ホルスタインは白黒の模様、肉牛は鼻紋で判断する。人は顔色で体調を判断するが、牛は鼻の湿り具合を見極めることができ乾くと体調が悪い。鼻紋は牛の血統書である登録証に必ず添付され、記載されている内容に間違いないことを証明している。


新鮮な空気・エサ・水を求めている

牛は他の動物と比べて、莫大な酸素を必要としており、臭いのない新鮮な空気を求めている。府県から乳用雌牛を預かり育成受胎させ、肢蹄の強い健康な若牛を飼い主に返す優秀な育成農家が断言する。「横臥したとき、淀んでいた地面から1mの壁を空け、鼻先にきれいな空気が流れるようにした。その結果、子牛の動きが変わり呼吸器病が激減し、牛は新鮮な空気を求めていることが分かった」と話す。牛床の前方に小さな穴を設ける酪農家の中も存在する(写真)。


放牧地でふん周辺の臭いは不快を感じ、避けて通るためその部分の草だけが繁茂し不食過繁草ができる。長い飼槽通路でも床面に大量のふんがあるところは避けて、きれいで乾燥しているところから埋まっていく。

パドックの草架にロール乾草を置いておくと、数日後には仲間の涎で採食意欲を低下させる(写真)。

疾病が極端に低く、高乳量を維持している酪農家は「飼料は1日経過したらすべてを捨てて夕方に新しいエサを給与する。もったいないと古いものを喰べさせると病気になるので絶対に与えない」と断言する。人は自分の好きなものを好きなだけ喰べれるが、牛は喰べるものを自由に選ぶことができない。
乳牛は臭いに敏感で新鮮な空気、エサ、水を求めており、作業者も認識して管理すべきであろう(写真)。

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