乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー
テーマ6 牛本来の動きを理解した飼養管理(10回)
【4回目】高い音域やストレスで動きが変わる
牛は高い音域が苦手である
牛の聴覚はおよそ8,000ヘルツで、人の2,000ヘルツよりはるかに聞き分けることができる。自然界ではアブや蚊などの吸血昆虫から身を守るため、人より高い音域を得意としている。金属音、口笛、金きり音、人の叫び声や突発音、などは苦手で敏感に反応する。
ドローンを使って牧場風景を上空から撮影を試みたら、牛は一斉に放牧地で一方向へ走りだした。人にとって耳元で虫が飛んでいるような小さな音だが、牛にとっては脅威なのだろう。昼夜放牧の酪農家は70頭の牛追い作業を省略するためドローンで誘導している。プロペラの音と風圧を利用して、後ろから耳元に近づけると、立ち上がって牛舎の方向へ移動させる。
牛は連動スタンチョンが苦手なようで、同一の飼槽に連スタと一本レールを設置すると、レール側から埋まってくる。連スタは捕獲されるという不安感もあるが、カチャカチャという高い音が苦手なのだ。最近は顔の出し入り時の金属音を極力抑えるため、ロック部が強化プラスチックやゴム製品を挟むなど工夫されつつある。繋留する装置は開閉がシンプルで静かな音に、独自に設計した酪農家も見受けられる(写真)。

音に反応して牛の動きが変わる
搾乳ロボットは短期間で自発的な行動を促すように、音に反応させることがポイントのようだ。給与する濃厚飼料は粉状より、ペレット状が推奨されている。粉状はフイーダ内で汚れやすい、ネズミのエサで故障の原因になる、嗜好性が低い・・・だけでなく、給餌機にエサの落ちる音は牛を誘導、動きが変わるからだ。
エサ寄せロボットはピーという音を発してから動く、それが鳴ると周辺でたむろしていた牛達は飼槽へ向かう。その合間をぬって弱い牛は搾乳へ行くので、この音は重要な役割を果たしている。搾乳ロボットが繋ぎやフリーストールなどの他の飼養形態と比べおとなしく懐くのは、人の怒声や罵声が聞かれないからだ。乾乳にしたら搾乳牛舎から離して、ミルカーポンプの音を聞こえない位置へ移動しリラックスさせる。音(特に高い音域)は牛の行動を変え、ストレスにもなるので配慮が求められる。
人は自らの耳を動かすことは出来ないが、牛の耳は揺り動かしてハエやアブを追い散らす。耳標は日本でBSEが発症したため、全ての牛に個体識別番号を装着した。ところが、子牛の小さな耳に複数の耳標を付けたことで風通しが悪くなり肺炎が増え、やっかいなマイコプラズマ乳房炎に繋がったと疑念をもっている(写真)。

ある哺育育成センターでは、子牛の耳の毛を刈って通気を良くして成果を挙げている。
ストレスをモニターし管理する
牛の「ガンベ」を見かけるが、正式には皮膚糸状菌症という病気だ。本来、そんなに悪さをするものではなく、命を落とすようなことは滅多にない。ただ、痒により増体の低下や、他の疾病にも繋がる可能性がある。
成牛より子牛や育成牛にみられ、離乳直後、除角、牛群移動、哺乳量や飼料給与量が足りない・・・など、多くはストレスが原因だ。
牛の尾っぽの付け根周辺はダニ、シラミやハエなどの外部寄生虫で白くガサガサになる。壁や柱に擦(こす)り付け掻いているため、磨り減った壁や細くなった柱を見かける。適当な場所がないと隣の牛に擦り寄っていくため、次々と仲間へ移り厄介な病気だ(写真)。

一方、牛の舌は体のほとんどの部位をサンドペーパのように、舐めることができ自然に治療が行われる。最近は電動式のカウブラシを開発普及、機械を持ち上がり、角度が変るとブラシは回転する。
特別な馴致をしなくとも、ブラシ設置後から1週間程度でほぼ全ての牛が利用する。1日の利用時間は20~30分、1台あたりの頭数は40~60頭である。部位は尻(38%)が最も高く、続いて頭(30%)の利用が多かった(根釧農試2005)。牛の舌が届く背中よりも、届かない尻周辺と頭部を念入りにブラッシングしていることを意味する(写真)。

毛繕い行動は牛にとって強い欲求があり、ブラシの使用回数が多くなるほど何だかのストレスが生じている。何気ない音やストレスをモニター、牛本来の動きを理解した飼養管理が求められている。
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